●学校は、子どもの個人レベル、学校レベル、地域レベルのさまざまな危機に遭遇します。
●危機は、自然災害、事故、暴力事件などさまざまな内容を含んでいます。
●危機が影響を及ぼす範囲や内容によって、学校コミュニティは大きな影響を受けることになります。
危機となる事件・事故、災害とレベル(影響が及ぶ範囲)
表1-1に、学校が遭遇する事件・事故、災害をレベル(影響が及ぶ範囲)別に記しました。同じ事件・事故、災害であっても、その性質や被害者・目撃者の数などで学校コミュニティへの影響は異なると考えられます。
より動揺が大きいと考えられるものに*を付しています。
福岡県臨床心理士会における緊急支援数
2000年11月に会員の一人が中学生の自殺後の支援に関わったことを契機に、高橋(1999)、小西(1998)を参考に、事実の共有、急性ストレスに関する心理教育、各自の体験の機会の保障を骨子とする子ども、教職員、保護者対象のプログラムを作成し、数回の試行的実施を経て、学校コミュニティの緊急支援の手引きを作成しました。これは、急性のストレス反応への対応と二次被害の予防を組織的に行うものであり、私たちは学校が事件・事故直後から主体的に活動し学校本来の機能を回復することへの後方支援活動を緊急支援と名付けました(福岡県臨床心理士会, 2001)。
2000年11月~2012年3月までに学校から依頼された緊急支援件数は182件でした(事案別内訳を図1に示します)。子どもの自殺が全体の4分の1以上、続いて学校の管理外の事件・事故による子どもの死傷、管理下の事件・事故による子どもの死傷の順となっています。教師の不祥事発覚後の支援は当初には、想定していませんでしたが、4番目に多くなっていました。
教師が遭遇した事案/印象に残った事案
一方、2011年に私たちのグループが、A県内の小学校79校、中学校162校の教師3507名のご協力で実施した調査の結果、927名の先生方が過去10年の間に何らかの危機を経験したということでした(図1-1)。
教師が遭遇した事案の延件数は1208件、印象に残った事案は747件で、いずれの場合も最も多いのが学校管理外の事件・事故、続いて子どもの自殺・自殺未遂であり、教師の不祥事の発覚は第3番目となっています(樋渡ら, 2016)。