学校コミュニティ危機への心の支援

~ 予防・準備から事後対応まで ~

特定問題の予防や解決に関する心理教育


 

<自殺予防教育>

(窪田由紀編 窪田由紀・シャルマ直美・長﨑明子・田口寛子 著(2016). 学校における自殺予防教育のすすめ方 遠見書房 から)

 

自殺予防教育の3つのポイント

自殺予防教育のポイントとして、以下の3点が挙げられます(窪田,2016)。

生涯を通じてのメンタルヘルスの基礎を築くこと

ゲートキーパー養成

自殺予防の視点に立った教育活動

 

 

生涯を通じてのメンタルヘルスの基礎を築くこと

子どもの時に「メンタルヘルス」について学ぶことで、一生を通じた生き方、すなわち自らのいのちを守る生き方が期待できます。さまざまな人生の危機に遭遇した際に、一人で黙って苦しむのではなく、「周囲に援助を求める」という方法を選ぶことができると考えています。

また、日常的なストレス対処の方法をもつことの大切さを伝えることも重要です。自分に合ったストレス対処の方法をもつことによって、私たちは大人も含めて、日常生活を乗り切っています。

 

ゲートキーパー養成

子どもは自殺を考えるような厳しい事態に遭遇した際には、親や教師よりも圧倒的に高い確率で友人に相談します。したがって、友人の危機に遭遇した際の適切な対処方法を知らせることによって、「ゲートキーパー」*3になってもらうことが期待できます。

 

*3 ゲートキーパー:自殺に至ってしまわないための「門番」。自殺のサインに気づき、見守り、

          つなぐ存在のこと。

 

自殺予防の視点に立った教育活動

自殺予防教育の位置づけを考えた一案として、以下のものを提案します(図3-2)。

子ども達への様々な関わりの中に、自殺予防教育の視点をお持ちいただくことによって特設された自殺予防教育の授業が実施できない場合でも大切なメッセージを子どもたちに届けていただけると思います。

 

自殺予防教育で伝える3つのメッセージ

だれにでもこころが苦しくなるときがある

どんなに苦しくても、必ず終わりがある

だれかに相談できる力を身につけよう

 

自殺予防教育の授業の例(シャルマ,2016)

事前アンケートとその配慮事項

「学校に行きたくないと思ったことのある人」「死にたいぐらいこころが苦しくなったことがある人」「どのようにもやもやを攻略しているか」「こころが苦しい時に、だれかに相談しているか」「このような学習をすると、よけいにこころが苦しくなりそうか」を尋ね、その結果を集計して授業の中で使います。

なお、「このような学習をするとよけいにこころが苦しくなりそう」と書いた人に対して、個別に話を聴いて、授業に参加できるかどうか配慮します。

 

自殺予防教育の授業の実施(例)

1.事前アンケートの結果を見て、学習のめあてを確認する。

2.こころのもやもや攻略法について考える。

3.こころのもやもや度チェックをする。

4.アンケート結果から、だれかに相談できているか、実態を知る。

5.「伝えたい3つのメッセージ」を学習する。

6.相談された時の「話の聴き方」を学習する。

7.相談できる人、場所について知る。

8.学習のまとめをする。

 

事後は感想文と日ごろの様子から、個別対応が必要な子どもを先生方と一緒にピックアップし、スクールカウンセラーと連携して対応します。

 

自殺予防教育実施の際の留意点

子どもたちどうしのあたたかい関係が前提になります。ぎすぎすした、とげとげしい言葉が飛び交っている学級においては、こころが苦しい時に「話をしよう」「話を聴こう」という学習は難しいと思われます。学校、学級の実態に合わせて実施する必要性があります。

 

自殺予防教育の詳細

以下の書籍に詳細が載っておりますので、ご参照ください。

「学校における自殺予防教育のすすめ方──だれにでもこころが苦しいときがあるから」

窪田由紀(編) 窪田由紀・シャルマ直美・長﨑明子・田口寛子 (著) 2016 遠見書房

 

 

<心の減災教育>

(窪田由紀・松本真理子・森田美弥子・名古屋大学こころの減災研究会編 (2016).災害に備える心理教育~今日からはじめる心の減災 ミネルヴァ書房 から)

 

心の減災と心の減災教育の定義

心の減災と心の減災教育の定義は以下の通りです。

心の減災:心理的側面においても事前に準備を行うことで、災害時に生じる心理的な被害を

      減らすこと

心の減災教育:災害時に生じうる心理的影響についての理解と適切に対処するスキルを育成し、

        最終的には健康的な心の発達促進を目指すプログラム

 

心の減災教育の必要性

我が国は地震大国であり、大きな災害が、いつどこで起こってもおかしくありません。

災害後の支援は極めて重要ではありますが、とくに子どもの場合には心の健康な発達支援という点からも、前もって備え、心理的な被害を減らすことを目的とした心理教育もまた重要であると考えています。

 

心の減災教育プログラムの概要

小学生用プログラム、中学生・高校生用プログラム、成人用プログラムがあります。

小学生用プログラム

全3回(ストレス対処プログラム、認知修正プログラム、対人関係プログラム)で構成されています。

中学生・高校生用プログラム

全2回で構成されています。

 

心の減災教育の効果

心の減災教育の効果として以下のものが挙げられます。

呼吸法対処効力感の向上

否定的な認知が修正できるという理解(認知の修正)

他者への信頼感(対人的信頼感)の向上

 

 

心の減災教育についての詳細

心の減災教育の詳細については、以下のホームページや書籍をご参照ください。

名古屋大学こころの減災研究会 http://kokoro-gensai.educa.nagoya-u.ac.jp/wordpress/

 

災害に備える心理教育:今日からはじめる心の減災

 

窪田由紀・松本真理子・森田美弥子・名古屋大学こころの減災研究会 (編) 2016 ミネルヴァ書房

 

 

 

 

 

 

 

 

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