学校コミュニティ危機への心の支援

~ 予防・準備から事後対応まで ~

緊急支援の研修


 

事件・事故、災害後に適切な緊急支援が行われるためにも、日ごろから研修を行うことも重要です。

緊急支援研修リスト

スクールカウンセラーを対象とした研修

基礎研修

コーディネーター養成研修

学校関係者を対象とした研修

一般教職員対象の研修

管理職対象の研修

教育委員会関係者対象の研修

保護者、地域を対象とした研修

 

スクールカウンセラーを対象とした研修

基礎研修(学校コミュニティの危機への支援者養成研修)

学校コミュニティの危機とその反応、緊急支援プログラムの概要を理解した上で、緊急支援チームの一員として、または当該校配置のスクールカウンセラーとして特別な配慮を要する構成員のカウンセリングや教職員の個別コンサルテーション等の役割を果たす支援者を養成するためのプログラムとなっています。以下の内容で構成されています(表4-1)。

 

 

*1 緊急支援イメージアップ演習

架空の事例を基に、どのような支援が必要であるかについて考えるための演習です。具体的には、学校コミュニティを危機に陥らせるような出来事に遭遇した際に、子どもたち、教職員、保護者、地域がどのような反応を示すのかをイメージし、それらのさまざまな事象に対して、どのような対応が求められるかについて考える演習です。

 

*2 児童生徒プログラム演習

架空事例に沿って、全校集会から始まり、児童生徒対象プログラムの中核となるクラス集会(事実報告、こころの健康調査票の実施)から個別面接の実際を体験するものです。原則としてプログラムのこの部分は担任教諭をはじめとした教職員が担うものであり、スクールカウンセラーは、その実施方法について教職員に対して研修を行うことになります。この演習では、担任役、子ども役となり、実際にロールプレイを通して緊急支援時の子どもと教師の体験を疑似的に体験することで、教職員に対してより実践的な研修を行うことが可能になると考えられます。

 

基礎研修の効果

これまでの研究から、基礎研修によって、緊急支援時の見通しを持つことができ、緊急支援を行うことに対する不安が減少することが分かっています(山下ら, 2015; 山下ら, 2016; 山田ら, 2015)。スクールカウンセラーが基礎研修を受けることは効果的であると言えます。

 

緊急支援コーディネーター養成研修

臨床心理士会などのスクールカウンセラー組織から派遣された緊急支援チームリーダーであり、学校内緊急支援チームの中で心理臨床の専門家として中心的な役割を果たすスクールカウンセラー(緊急支援コーディネーター)を養成する研修です。以下の内容で構成されています。

基礎研修と同様の内容

学校コミュニティの混乱を見立てる視点や学校コミュニティの混乱が大きい場合の支援の留意点、

 緊急保護者会開催に当たっての留意点、バックアップについてなどの講義

緊急保護者会などに関する演習

 

学校関係者を対象とした研修

事件・事故、災害が起きた際、適切な時期に適切なプログラムを提供することができるためには、学校関係者が、事件・事故、災害に遭遇した人々が示す反応とその対処方法、緊急支援プログラムについての基礎的な知識を持っておくことが重要です。また、事件・事故、災害が起きた際に、教職員の立場によって反応や求められる役割が異なることが明らかになっています。一般教職員、管理職、教育委員会関係者のそれぞれの立場に応じた研修が必要だと考えられます。

 

一般教職員対象の研修

一般教員対象の研修は以下の内容で構成されています(表4-2)。

 

 

教職員管理職対象の研修

学校コミュニティにおいて、事件・事故、災害が起きた際、管理職は事後対応の全ての責任を負うことになります。管理職自身非常に大きな衝撃を受けながらも、管轄教育委員会への報告書類の作成、場合によっては保護者や地域、マスコミの責任追及の矢面に立ちつつ、事後対応の方針を示すことが求められます。そこで、子どもたちに対して適切な時期に適切な支援を行うことができるために、管理職対象の研修は以下の内容で構成されています。

一般教職員対象の研修と同様の内容

学校コミュニティ全体の混乱を見立てる視点

教職員のメンタルヘルス対策について

緊急保護者会議開催に当たっての留意点     など

 

教育委員会関係者対象の研修

教育委員会は、管理職をバックアップし、外部からの支援体制を整えることが非常に大切になります。したがって、以下の内容で構成されています。

一般教職員対象の研修と同様の内容

管理職対象の研修と同様の内容

メディア対応について

警察対応について

 

保護者、地域を対象とした研修

保護者、地域の人々が事件・事故、災害に遭遇した人々が示す反応とその対処方法についての基礎的な知識を持っていることは、万が一事件・事故、災害に遭遇した際に、子どもの回復に大きく影響すると考えられます。当該校スクールカウンセラーが、PTAが地域の公民館と連携して行っている各種講座などの中で取り上げてもらえるよう働きかけたり、スクールカウンセラー通信の中で取り上げたりすることができるかもしれません。学校、教育委員会とも協議しつつ、保護者対象の研修の機会を作ることは必要であると考えています。

 

 

 

 

 

 

 

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