学校危機への心の支援とは、第1段階として危機となる出来事を予防する、第2段階として万一起こった場合に備えた体制を整備する、第3段階としては危機発生直後の対応を行う、第4段階として長期的な対応とこれまでの予防・準備・直後対応について検証するといった4段階の取り組みからなっています。
図2-1は、Kerr(2009)を参考に、各段階の具体的な取り組みを図示したものです。
ここでは、子どもの様子の観察やアンケート、面談などを通して情報を収集し、早期にリスクを発見して未然に問題発生を防ぐことや、さまざまな予防教育を行います。子どもたちの自尊心を高める、自己理解・他者理解を深める、自己統制の力をつける、コミュニケ―ションスキルを育むといった取組みを進めることは、いじめや暴力、自殺、薬物乱用などの問題予防に繋がるだけではなく、身近に災害、事件・事故が生じた場合にうける心理的影響を緩和し、打たれ強くする(レジリエンスを高める)ことが期待されます。
ここでは、危機的な出来事はどんなに予防しても起こりうるものだと考えたうえで、いかに迅速・適切に対応するかをあらかじめ考え準備しておきます。役割分担やマニュアルの整備、訓練・研修などを行います。自然災害や火災発生時の避難経路を定め、訓練しておくこと、いじめ事案が発生した場合の対応計画を定め、役割に応じた研修を行っておくことなどがそれにあたります。
この段階は、安心と安全を回復するための危機直後の対応に関する部分であり、物理的安全の確保と心のケアが含まれます。この段階での心のケアは、心理的応急処置と言われるもので、学校のすべての先生方、子どもたち、保護者に対して、起こったことについての正確な情報と心のケアについての基礎知識を伝えることで、初期の混乱を収束させようとするものです。
この段階には、事件・事故によって深刻な影響を受けた子ども、教職員、保護者への長期的な心のケア、起こった出来事についての予防段階、準備段階、対応段階の取組みの評価がなされ、その結果を次の事案の予防に生かすための検討が行われます。近年、いじめ防止対策推進法の定めで教育委員会が設置した第三者委員会における検証は、この段階に位置付けられます。