学校コミュニティ危機への心の支援

~ 予防・準備から事後対応まで ~

学校が事件・事故、災害に遭遇したらどのようなことが起きるのか?


 

大きな事件・事故、災害に遭遇したとき、学校ではどういうことが起きるのでしょうか。

大きく分けて、個人の反応と集団の反応があります。

 

個人の反応


 

大きな事件・事故、災害に遭遇するということは、個人にとって3つのストレスとなります。

自分も同じような危険にあうかもしれない、またはあっていたかもしれないという恐怖に関わる

 ストレス。 

大切な級友や先生がいなくなったことによる喪失に関わるストレス。

事件・事故、災害によって日常生活が変化したことによるストレス。

こうしたストレスから、感情面、身体面、認知面、行動面でストレス反応が出ます。

 

当然のことですが、事件・事故、災害の影響を受けるのは子どもたちだけではありません。

子どもを支える教職員、保護者も同様に影響を受けます。

 

事件・事故に遭遇した直後にこうした反応が起きることはある程度自然なことと言われています。

「異常な状態における正常な反応」と言うべき反応です。

 

感情面での反応

子どもたちの反応

  教職員の反応

□ショック

□何も感じない

□悲しみ

□寂しさ

□恐怖

□不安

□怒り、イライラ

□自分のせいだと思う自責感

□誰も信じられないような不信感

 

 

 

 

子どもと同様の反応が大人にも起こります

 

 

 

身体面での反応

子どもたちの反応

 

 

教職員の反応

□動悸、発汗、口の渇き、過呼吸、

 手の震えなど

□寝つきが悪くなる、悪夢を見る、

 眠りが浅くなる、早朝覚醒

□食欲不振または過食

□下痢や腹痛、吐き気

□身体の痛み、肩こり、腰痛

□疲れやすさ

 

子どもと同様の反応が大人にも起こります

 

 

認知面での反応

子どもたちの反応

 

教職員の反応

□授業に集中できなくなる

□学力が低下する

□話がまとまらなくなる

□何かを決めることに時間がかかる

 ようになる

□仕事に集中できなくなる

□やるべきことが覚えられずにすぐに

 忘れてしまう

□物事を筋道立てて考えられなくなる

□何かを決断することに時間がかかる

 ようになる

□問題解決能力が低下する

 

行動面の反応

子どもたちの反応

 

教職員の反応

□口数が減る、または増える

□何もしなくなる、または落ち着きなく

 動き回る

□忘れ物が増える

□うっかりミスが増える

□少しのことでカッとなる

□ふざけのような反応が増える

□大人に甘えることが増える

 

 

 

□何も行動したくなくなる、

 または落ち着きがなくなる

□うっかりミスが増える

□タバコやアルコールの量が増える

□ちょっとしたことでカッとなる

□過度に子どもたちを心配する

□子どもたちを何も心配する必要がないと

 思い込む

□誰かの判断に頼り切ってしまう

□全て独断的になってしまう

 

 

学校集団の反応


 

子どもや教職員それぞれが事件・事故、災害によって影響を受けた結果、学校集団にも影響が出てきます。

集団に起きやすいこととして、3つ挙げられます。

人間関係の対立

情報の混乱

学校が抱えていた問題の顕在化

 

人間関係の対立

事件や事故に遭遇した学校では人間関係の対立が起こりやすくなります。もともとあった対立がより激しくなることも多いです。学級内の数名の間のものから、学校コミュニティが分断されるものまで、対立の規模は様々です。対立の形は下記のような形を取ります。

子ども⇔子ども (学級内、部活内、学校全体など)

子ども⇔教職員 (子どもの教職員への不信感)

教職員⇔教職員 (教職員間の考え方の違い、教師の不祥事の際に起きやすい)

教職員⇔保護者 (保護者の教職員への不信感)

保護者⇔保護者 (保護者間の考え方の違い)

対立の背景にあるものとしては2つの理由が挙げられます。

自分と違った反応をしている他者が受け入れられない:

級友の死に涙を流していない他者に対して「あいつは冷たい」「異常だ」などと自分と違った反応をしている他者が受け入れられないことが関係します。教師の不祥事では、当該教師を慕っていた子どもと、被害者やその周辺の子どもとでは、互いに相手の反応が理解できず、攻撃し合うようなことにもなりやすいです。

事件・事故の責任を他者に転嫁する:

「どうしてこんなことが起こったのか」「何とか防げなかったのか」という思いが、「あの人のせいだ」「あの人がこうしてくれれば防げたのに」といった形で他者非難につながることがあります。

 

情報の混乱

正しい情報に基づいて行動することは事件・事故後の対応において非常に重要なことです。ただ、事件や事故に遭遇した学校では情報の混乱がしばしば起こります。その結果として、学校の混乱がさらに大きくなってしまうことも起きていきます(二次被害)。情報の混乱には以下の2つがあります。

情報伝達が正しく行われない:

必要な情報が学校内で共有されなかったり、正しく伝わらないことが増えます。これは、それぞれの個人の判断力や記憶力が低下していることが関係しています。口頭で伝えた情報では大きな齟齬が生じることも多くなります。

うわさ(デマ):

事件・事故に対する憶測やうわさが拡がります。LineやTwitterなどのSNSを通したうわさの拡散も生じます。何が起きているのか知りたいという、それぞれの人の思いが関係しています。

不明確で曖昧な情報を伝えることは、うわさの拡散を助長することもあります。

 

学校が抱えていた問題の顕在化

それまで学校が抱えていた問題が事件・事故で学校の機能が低下することによって顕在化することがあります。

二次的な被害について

学校集団の反応として、人間関係の対立や情報の混乱などが生じます。そのことから、新たな傷つきが生じたり、深刻なトラブルに発展したりといった二次的な被害が生じることがあります。

また、事件・事故の影響を受けた個人への対応を誤ることによって子どもの状態が悪化することなども二次的な被害と言えます。

二次的な被害の例

事件・事故のうわさからいじめなどの個人攻撃がはじまる(スケープゴート化)。

大人が不安なあまり子どもを過度にはげましてしまう。

不安や恐怖から「ふざける」ような行動をしてしまう子どもを強く叱ってしまう。

 

学校が事件・事故・災害に遭遇することというのは、個人のみだけではなく、学校コミュニティにも影響が出ます。

二次的な被害を予防するためにも学校コミュニティ全体を対象とした緊急支援が必要になります。

 

 

 

 

 

 

 

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