事件・事故、災害後の緊急支援
(福岡県臨床心理士会 編/窪田由紀 編著(2017).学校コミュニティへの緊急支援の手引き(第2版).金剛出版 から)
学校コミュニティの危機とは、子ども、教職員、保護者、地域の多くの人々を巻き込む突然の衝撃的な出来事によって混乱し、本来の機能を発揮できなくなることです。このような学校コミュニティの危機に際しては、学校コミュニティが子どもの反応を受け止め、健全な成長・発達を支援するという本来の機能を回復するために、外部からの支援を受けることが欠かせません。
学校コミュニティ危機への心の支援とは、子ども、教職員、保護者など学校コミュニティの主たるメンバーに、それぞれに適した形で、次の3つの内容を提供することで、日ごろの安定した状態を取り戻してもらうことをねらいとしています。
❶何が起きたか、起きているかについての情報*1
❷身近に衝撃的な出来事を経験した際に、心や体、行動におこる反応と対処方法 についての知識*2
❸出来事に関連して、それぞれが感じたこと・考えたことを自由に表現する機会*3
*1 混乱した状況の中では、情報も錯綜し、あっという間に事実と異なる噂が広がって、誰かが不当に責められるようなことも起こります。何をどのように伝えるかについては、特に子どもの死の場合はご遺族の意向を最大限尊重しながら、学校、教育委員会、スクールカウンセラー等で十分検討し、文章化して伝え手によって内容が異なるようなことがないよう留意する必要があります。
*2 突然身近に衝撃的な出来事が起こると、心や体、行動に日ごろと違ったさまざまな不調が生じるのは、「異常な事態への正常な反応」であって、けっしておかしなことでも恥ずかしいことでもないことを伝えるのが第一歩です。このことを知るだけで、もともと健康であった大半の人々は、自分自身の不調の原因がわかって安心し、周囲の比較的強い反応を出している人に対して、温かく接することができるようになり、互いに支えあう雰囲気が生まれます。
*3 突然衝撃的な出来事を身近に体験すると、多くの人の心に、不安や恐怖、緊張などのほか、なぜこんなことが起こるのかについての怒りやどうしようもないことへの無力感、自分が至らなかったからではないかという自責感など、さまざまな思いや考えが浮かびます。そのような思いや考えを安心できる場でことばにして表現し、受け止めてもらうことは、混乱から回復するうえで役に立つと思われます。ただし、重要なことは「表現する機会」を保証することであって、話したくない人に無理に話させるようなことがあってはなりません。
学校コミュニティ危機への心の支援プログラム
■事件・事故後の緊急支援の流れ
緊急支援プログラムの詳細は以下の書籍をご参照ください。
福岡県臨床心理士会 編/窪田由紀 編著 2017 金剛出版