対人スキルアップ・プログラムは、良好な人間関係のために必要な行動や感情、認知について、多くの技法を通して学びます。
■対人スキルアップ・プログラムの目的
対人スキルアップ・プログラムの目的として以下の3つが挙げられます。
❶自己及び他者を尊重すること
❷対人関係を形成・維持すること
❸問題解決能力といった対人スキルを習得・維持すること
対人スキルアップ・プログラムの目的を達成するために必要なことが4つあります。
❶周囲からの支え、承認を認識すること
❷自尊感情を高めること
❸ストレスに気づき対処する能力を高めること
これらの前提として
❹学級がプログラムの目的を達成できる雰囲気、環境を備えていること
したがって、ただやみ雲に実施すればいいのではなく、発達段階や所属する学校、学年、学級の状態に合わせたプログラムを構成・実施することに意味があります。
こうした基本的な対人スキルの不足が、飲酒・喫煙・薬物乱用や自殺問題などの背景にあることが指摘されています。特定問題に対処するためにも基本的な対人スキルを学ぶことは重要なことです。
■対人スキルアップ・プログラムの例
ここで紹介する具体的なプログラムは、私たちがある小学校で4年間にわたって教師チームと臨床心理士チームの協働で開発・実施してきたものです。
詳しい指導案は、http://www.kita9.ed.jp/sarakura-e/kenkyu/2010/index.htmlをご覧ください。
●お互いが知り合い、安心できるクラスづくりをねらいにしたプログラム
・名前ビンゴゲーム
・紹介ビンゴゲーム
・あったか言葉をふやそう
・いいとこさがし
●自己理解・他者理解、自己コントロールをねらいにしたプログラム
・ぼくのこと、わたしのこと
・いろいろな気持ち
・友達の気持ち
・ぼくの気持ち、わたしの気持ち
・気持ちのコントロール
・さわやかコミュニケーション
●協力することをねらいとした演習
・チーム活動
■対人スキルアップ・プログラムの効果の例
自尊心の向上、向社会性の向上、攻撃性、引っ込み思案傾向の低下が確認されています(荒木ら, 2010)。
小学校全体で継続的に実施することで、自尊心の向上、ストレスマネジメントに関する自己効力感の向上とともに、中学校進学後も小学校の対人スキルアップ・プログラムで学習した内容を、自己コントロールや対人認知・行動面等に役立てていたことがわかっています(荒木・窪田, 2013;荒木・窪田, 2014)。